矛盾と戦う。
前職で理不尽なことがあったりして上司に相談すると、8割方、この言葉が返ってきました。
自分の所属先で代々受け継がれてきた言葉なのか、会社全体でこの言葉が持て囃されて使われ続けているのかはわからないですが、
無茶振りを部下に要求するシュチュエーション等でもよく聞く言葉でした。
当時は、深く考えることなく、
「そうか、経営とは矛盾と戦うことなのだから、ぶつくさ文句を言わずに頑張ろう」
みたいに自分を納得させ、多少身体が壊れても頑張っていました。
それはまるで、具体的なアドバイスは一切もらえずとも、頑張らせることの出来る魔法の言葉。
端的に言えば上司自身に最適な答えがなくとも、この言葉で全てが通ってしまう様な。
今思えばいかにもで、都合の良い、さまざまな事の言い訳にもなりうる言葉なのですが、
難題があるとき、僕自身実際にこの言葉を心の中で反芻し、ある種の支えにしていた気さえします。
ただ、前職で退職を意識するようになってからは、会社の仕事をかなり冷えた目で見ていたため、
この言葉を聞くたび、「如何なものか」と、聞き流していました。
しかしながら、この2年、世の中はさまざまな矛盾と戦っていた気がします。
政治的な話はキリがないのでここではしませんが、
今まで「なあなあ」で済んでいた事にあらゆる人々が決断を迫られ、何かを解決する為に問題に立ち向かいました。
それらの結果の良し悪しはまだわかりませんが、既存の価値観の多くは木っ端微塵になり、
様々なことが新たなステージに移りました。
当店も出店自体を諦めるかどうか本当に悩みました。
オープンを延期した際にも、このまま計画が頓挫することを覚悟しました。
また、好きなものに囲まれるために店を始める、最低限の自分の生活費が稼げればそれで良い、
が、その最低限さえクリアー出来ないのではないか。
苦しい戦いが始まるのは目に見えているが、それでは前職の頃と変わらないのではないか。
連日葛藤しました。
それが嫌で、そこから抜け出したくて必死で独立したにも関わらず、奇しくも此処に来て再度、「矛盾と戦う」ことになってしまいました。
そんな中、一昨年のポップアップ営業で一定の手応えを感じることができ、さらに様々な方々のサポートを受けて、何とか昨年にオープンに漕ぎ着けて今に至ります。
そして、多くのお客様、お取引先、友人、知人、家族のおかげで、現在ギリギリ何とか店舗を存続出来ております。
そこで、やっと本題なのですが。
当店では前職ほどガチガチではないですが、それなりのMD計画というものを組んではいます。
しかし、そのシーズンのお取り扱いブランドを横断しての全体的なセレクトのテーマを設定することはありませんでした。
それは、そのテーマに縛られてしまうことで買付けに臨む意識がフラットな状態とは異なってしまい、
結果的に好きなものを仕入れし逃し、後悔することがあるのではないかと思っていたからです。
しかし、初の仕入れから1年経ち、新たな方向性を探るべく、あえて今季はセレクト全体にテーマを設けて、
その「矛盾と戦う」ことにしました。
今季、今年2022年のセレクトのテーマは
「矛盾」です。
新しいと古いであったり、機能性とデザインであったり、個性と調和であったり、他者と自分であったり。
私は、服に限らず、様々な両立困難な相対しうるような問題を解決するために、
多くのデザイナーは苦心しプロダクトを作っていると思っています。
それらを僕のフィルターを通して「矛盾を感じるもの、矛盾を解決する為の努力を感じるもの」を
各ブランドのコレクションから切り取り、今季の商品をセレクトいたしました。
まだ具体的なお話はできないのですが、某ブランドに依頼している別注アイテムもそれをキーワードに作成していただいております。
先日、早くもDIGAWELから22SSアイテムが到着いたしました。
そして早速セレクトテーマを如実に反映したジャケットが入荷しておりますので、
是非、オンライン、店頭でご覧くださいませ。
そのDIGAWELのジャケットの具体的なブログを近日中にアップいたします。